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「来てくださったんですね!」 終演後、帰ろうとする私を見つけた沙知さんが声を掛けてくれる。 私は、一瞬気付かないフリをするか迷ったが、 「眞子さん!」 と呼ばれてしまっては逃げられず、意を決して軽く手をあげながら 「沙知さん、お疲れ様です」 と応える。 沙知さんの出演する舞台に対する、今思うと過剰だったそれを抜きにして考えても。 丁度、私の夏3回分が862円だった時と同じような、期待外れ感。 ワークショップで感じられた彼女の異質な魅力はすっかり息を潜め、他の劇団員に負けず劣
「三年目だね」 彼は去年とあまり変わらないように見える。 「ええ、三年」 私も去年と出来るだけ変わらないような声のトーンで話す。 「3周年おめでとう」 「おめでとう」 細長いグラスを軽く鳴らし、私たちは同じタイミングでシャンパンを口に含む。 円満離婚。 その代表例のような別れ方だった。 2LDKのアパートで10年間仲良く暮らし、丁度同じタイミングでそろそろこの人から離れても良いなと感じた、それだけだった。 子供も授からなかった為2人だけの意思ですぐに話はまとまり、私たちは仲
私は大抵どこに行くにも一人だ。 一人でご飯、一人で映画、一人でライブ、一人でカラオケ、一人で旅行もしてしまう。 あ、そんな憐れみの目を向けないでほしい。 友達が全くいないわけではない、自分で選んで一人で居るのだ。 基本的に一人が苦にはならない性質で、むしろ女の子特有の一緒にしようとか、まねっこする、とかが苦手だ。 ご飯はその時食べたいものが食べたいし、各々そうすることが自然である関係でないと私はやっていけない。 昔女の子3人で仲良くしていた頃、私以外の2人で私を除け者にして
「凄いよく見えるね」 「田舎だもんねー」 「ねぇ面白いこと思いついた」 「何?」 「…星が欲しーなぁ、って」 「全然面白くないよ」 「笑ってるじゃん」 「これは面白くな過ぎてだから」 「笑ったから負けね」 「じゃあ…星を買う方針で」 「おっ」 「ちょっと感心するのやめて恥ずかしいから」 「買ってよね」 「スターになったらね」 「ノリノリじゃん」 実家で見ていた雑誌やテレビの情報は殆ど役に立たなかった。 それらがあるのはいつも全部東京で、特に渋谷は私たちの妬みと憧れの的だった