『カメラを止めるな!』に通じる興奮をある舞台に感じた

ちょうど時間が合ったので、ミスiD2019ファイナリスト相笠萌さんの出てる舞台『リミット・オブ・タイムラグ』を渋谷で観てきました。

動機としては相笠さんを観るためです。そう、チェックのためです。
わざわざ行くってことはおまえ贔屓だろうと言われそうですが、正直ほんと贔屓という感情は全ファイナリストに対し全くないです。等しく。基本的にミスiDに出てる女の子に関しては、ツイッターはもちろん、CHEERZも、インスタも、時間が合えば配信だってかなり観てます。リアルイベントや展示やライブでさえ、時間が合えばかなり足運んでます。「博愛主義的なストーカー」という感じです(気持ち悪いですね)。
いやそうは言っても推してるから行くのだろうとしつこい人は思うかもしれませんが、例えばセミファイナルの最後、僕は相磯桃花さんの個展に足を運んでますが、彼女は残念ながらファイナルに進んでません。でもいまでも僕は彼女の作品は大好きですし、その評価はむしろ今回のミスiDで前よりもずっと上がりました。ミスiDの評価とその人の評価はあくまで全然別物です。

前置きが長くなりました。
じゃあなんでわざわざnoteに書くかというと、僕は短くまとめるより長い文章を書くほうが時間がかからないから、というだけです。
そしてもう一つは、この舞台が思いもかけずめちゃくちゃ良かったから、です。

『リミット・オブ・タイムラグ』は、あるローカルテレビ局の話です。その、とある地元密着型の旅バラエティ番組の話です。
イメージとしては大泉洋を全国区にした北海道のローカル番組「水曜どうでしょう」みたいな感じかな。
で、その番組「オーディエンス・オブ・コネクト」という番組のスペシャル特番で急遽組まれた生放送の直前、というのがこの舞台の始まりです。

調子のいいディレクターと調子のいい出演者たちの楽屋から話は始まるのですが、基本一時間の生放送を含めたリアルタイムで舞台は進行していきます。
展開についてはネタバレになるので触れませんが、正直最初「うう〜わちゃわちゃしすぎてついていけないな〜」と思いながら観てました。舞台でかなりの確率で感じるザワザワとした感覚です。今回これはあるところから完全に払拭されるのですが、これが払拭されないまま終わる舞台というのも、悲しいかな少なくはない。
話も不穏な感じで始まるんですが、僕の感情的にも正直序盤は不穏でした。

肝心の相笠萌さんは、話が少し経ってやっと登場します。
いわゆる”東京から来た売れっ子女優”役。有名なんだけど、同時にちょっと安っぽい芸能人の感じで、全体にとても適役感があります。いや、これは褒めてます。なぜならまずこの女優は感じがとても悪いのですが、どちらかと言うと「ナチュラルにちょっと感じ悪い感じのある」相笠さんは、それをとても上手に演じてます。僕は彼女のことをミスiDエントリーから知ったにわかウォッチャーですが、彼女の「美人さん感」「クール官」「人に心許さない感」がいろいろと相まって、本当にこう言う人なのかもしれない、と思うほどナチュラルなはまり役を醸し出してます。

そして、そんな女優含め、ちゃらくて薄っぺらいテレビマン、一流、二流、三流芸能人にマネージャー、テレビ局のプロデューサーや編成責任者、そしておそらくこの番組に呼ばれたらしいロケで出会ったヘンテコな素人さんみたいな人までが混じり、この番組はもしかしたら終わってしまうのではないか…というような不穏な空気の中、話が進んで行きます。各方面の人間関係がギクシャクし、様々なコミュニケーション不全のほころびが大きくなっていく。伏線みたいなものもあるけどどうやって回収するのかな、どうやってまとめんのかな、何と無く予定調和に終わるんじゃないかな、といろんな不穏さとともに舞台は進みます。

しかし、突然話が動くのです。
これもネタバレになるので最低限の言葉を選んで書くと、極めて浅く一元的だった話が、ある瞬間から「メタ構造」になっていくのです。正確に言うといきなりではなく、「メタ構造なんじゃないか」というのを観客がだんだん気づいて行くように話のトーンが変わってきます。割と単純な話を想定してたこれは結構びっくりします。ああ、もしかしたらそう言うことなのか…!と。

ギクシャクしていた人間関係、ディスコミュニケーション、仲間への不信感などのネガティブが感情群が、否応がなしに進んで行く生放送の緊張感と、カメラの前で本音と演技、虚実が入り交じる「これこそテレビ」な構造を借りることで、ラストに向かうメタ構造の中で、今までより踏み込んだ相互理解、信頼の回復、そしてそれぞれの成長に至るという話になっていく。
びっくりです。そういう話だったんだ、って。
そして、これって最近観たなにかに似てるな〜とずっと思ってたんですが、あれですよ、あれ。映画『カメラを止めるな!』です。

問答無用にアガるブラスの劇伴とも相まって、ラストに向かいドライブ感が加速していく。そして、今までちゃらくて調子よかった出演者たちが全員人間としての複雑な魅力を纏って見えて来る。つまりこれは、ダメ人間がちが人間の尊厳を取り戻すまでの話なんですよね。何かを苦労して作る人間から見ると、いやそんな偉そうな話じゃなくどんな仕事であれ少なからず魂を込め苦労の連続で日々続けてる全人間にとって、これは無条件に響く話ですよ。
僕もミスiDのようななんの看板もない弱小コンテンツを細々と少人数でずっとやってる人間なわけで。
そこも『カメラを止めるな!』の、仕事に馬鹿馬鹿しいほどの情熱をかけいろんなものを失ってきたダメ人間賛歌的モチーフに通じるのです。

ああ、おもしろかった!

と言うわけで、ここまでほぼ相笠萌さんに触れずにきてしまいましたが、彼女もとてもいいです。
元AKBという肩書きもいい具合に効いてる。夏にやったミスiDイベントで、彼女のエピソードを色々聞いて僕は「早すぎた中井りか」と名付けたのですが、そんな「いい子ちゃんじゃない魅力」がこの舞台ではとても色濃く出てます。多分彼女はとてもシャイで、その悪い魅力を素直におもてに出すことも、かといっていい子の部分を押し出すことも、どちらも抵抗あるタイプの人だと思うんです。いい意味でとても面倒くさい人間。なので、こういう風に登場人物としてそれを演じられるのはすごく楽しいんじゃないかなと。そして、ほんとにめちゃくちゃいい役なので、彼女はとても得をしています。どういい役かは、これもネタバレになるんで言えませんが、とにかく相笠ファンは必見です。

舞台って映画に比べてもはるかに値段も高いし、寝ちゃったからもう一回見ようなんて気楽に見れないし、色々敷居高い。そして「面白いよこの舞台!」と奨めようと思ってもよっぽどのロングランでもない限り公演自体も短いから口コミが届きにくい。
日本における単発の舞台の困難さはとても複雑で根深いと思ってるので僕のような門外漢にはとても書けないけど、一つだけ思うのは、自信を持って勧められる作品があれば、微力でもいいからせめて思い切り勧めて見ようと。
これは自信を持って奨められるので、ここぞとばかり思い切り奨めておきます。今週の日曜までやってるらしいです。渋谷の道玄坂のユニクロの上です。

映画『カメ止め』があんなにヒットしてるいま、同じ時期にこういう面白いメタ構造の舞台があることに百万分の一でも注目が集まればいいなと。

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